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2018年04月09日

境界

日々せわしく生きているので、落ち着いて考える機会は少ない。毎日目にするものには何らかの道理があるという錯覚があって、当たり前のように通り過ぎる。何十年と時間がたっても、よほどの故障がない限り、現状を受け入れてしまう。
安心してください。これは自分のことを振り返っているだけで、誰かを念頭に置いているわけではありません。
これは毎日目にしている町家の話である。仕事場へ通勤するときにも、散歩するときにもその前を行き来する。
その家の屋根は切妻で、大棟が通りに平行で玄関は通りに向かって開いている。雨水は通りの側と裏に流れ、樋で受けている。雪のことがあるので複雑な構造を避けて切妻にしているのだろう。屋根はトタン葺きにし、その上に雪止めを設置している。何回か触れたが、このあたりの山間地にはでどこでもある形式で、見慣れた風景である。
江戸時代、町家の税が間口を基準にしたこともあり、城下の町家は間口が狭く奥が長いウナギの寝床式が多い。従って、間口の両端をぎりぎりまで広げて家を建てる。隣の家との壁がほとんど隙間なく、中には共通の壁にしてその中心線を境界にする長屋形式も見られたらしい。
段差がある場合には、屋根が隣の壁に接しているところも珍しくない。ここまでなら京都の町家で多くの例を見てきたので違和感はない。
中に屋根がざっくり切られた家がある。なぜそうなのか原因はいろいろ考えられるとしても、直接自分に関係がなければ、これ以上詮索することはない。
今朝気になって、ふとその屋根を見上げた。通りに面した屋根の部分が左右通してあり、雨樋も端から端までついている。ところが一尺ほど下がったところから屋根が左右とも切られてそれぞれ壁がくっついている状態だ。
この家がこのあたりで一番古そうだから、両隣の家が建つ時に屋根を切ったとしか考えられない。互いに合意されていればなんら問題はないし、他人がどうこう言う筋合いでもない。ただこう言った古い町家同士の境界はいろいろ揉める。
この辺りでは、雨仕舞のために屋根が隣家の所有地に入り込むことがあった。お互い様なので話し合いで解決するのが原則だが、声の大き方が勝つ傾向にある。
将来にわたって隣同士仲良くつきあうには思い切って測量し、原則として登記されている面積を基準に、それまでの経緯に決着をつけるような方法も有力である。
私はこういった間口まで影響するような境界争いは、田畑とは異なり、江戸時代にはそれほど多くなかった気がしている。税に直結するからだ。近代においては、建築に先立って測量されるので、この種のもめ事をかなり防げるようになった。
髭じいさん

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