シリーズ田舎探訪 福島県梁川町

しだれ桑(冬)
しだれ桑 時代に翻弄される桑物語

  しだれ桑とまちづくり
欲しかったのは独自性
 梁川にとって歴史的に大きな意味を持つ桑、しかも、他にはない「しだれ桑」をシンボルとして、自慢できる”まち”を演出できないか?桑と蚕の町・梁川町の歴史を「しだれ桑」に込め、これを地域住民、特に子供たちにビジュアルに伝え”まち”を愛し、誇りを持つ気持ちを育てられないか?
  私達はそんなことを考えていました。
  「しだれ桑」を街路樹にしたい!!誰でも手を触れ、面倒を見ることができる街路樹に・・・。

店頭に植えられているしだれ桑(梁川町広瀬町)
店頭に植えられているしだれ桑(梁川町広瀬町)
まちづくりって自分の住む”まち”を、「自分のもの」と思うことから始まるんじゃないかな。

阿武隈川に植えられた桑
阿武隈川に植えられた桑
蚕都「梁川」の歴史
蚕都たる由縁
 伊達郡梁川町は福島県を縦断する阿武隈川と広瀬川が合流し、太古の昔から洪水に悩まされている地です。 しかし、川のおかげで、江戸時代より梁川は「伊達の浜」と言われ、海産物や米の集散が盛んに行われました。
 寛永年間(1640年頃)より養蚕業が起こり、1772年(安永1年)、信達(信夫・伊達)二郡の17ヶ村に、 「日本蚕種本場」の称号が与えられました。お上より信頼のブランドを得たことで、梁川町は蚕種の輸出地として繁栄を迎えることになります。

しだれ桑
  時の流れとともに
桑もまた
 蚕都「梁川」の栄華は、昭和初期で終ります。現在、養蚕に携わる人は全くいません。 (例外的に、天蚕や野蚕と言われる、高級種を育てている人はいます。)
養蚕が廃れるとともに桑畑は荒れ果てて行きました。梁川に限らず伊達郡の至る所で、荒れ果てて伸び放題の桑畑が見られます。 その一方で、近年、桑や絹の効能が見直され、梁川・川俣町では桑と絹、保原・東和町でも桑を利用した、地域特産物の開発が盛んに行われるようになりました。
シルクパウダー、桑パウダー、桑茶、桑の実ジャム、桑畑を利用したカンニャボ(キセル貝)の養殖などなど…。
絹の保湿・美白効果も注目され、梁川町の蚕業試験場では、化粧品への応用特許を取得し、まもなく製品化されるようです。
  道沿い数百mに渡り続く伸び放題の桑畑
道沿い数百mに渡り続く伸び放題の桑畑

また、原料供給面でも、農業としての採算性を高める為、様々な試みがなされており、その目途も立っていという話です。ただこの場合、桑ではなく回転を良くする為、春に葉芽の出るのが早い「絹柳」を蚕に食べさせるようです。


  桑の未来
 しだれ桑を育て始まったのは、広瀬川の氾濫が契機となっています。洪水による河川改修、堤防の築堤による道路改修が進められる中、 私達はその街路樹として「しだれ桑を採用して欲しい。」と提案しました。その為に、しだれ桑を接木して数十本育て上げました。
 結局、いろいろな事情により街路樹としては採用されず。しかし、幹線沿いや商店の店頭、民家内には、私達が育てたしだれ桑が、 今でも植えられています。私達が育てたしだれ桑以外にも、試験場では数十年前からしだれ桑を無料配布しており、梁川をはじめ伊達郡では、しだれ桑を育てている家がかなりの数に及びます。
 この長い歴史に裏打ちされた”しだれ桑ネット”を、価値ある資産として、何かに活用できないものか?と思っています。
 
福島県蚕業試験場から移植されたしだれ桑(梁川駅前)
福島県蚕業試験場から移植されたしだれ桑
(梁川駅前)

樹齢30余年のしだれ桑(福島県蚕業試験場内)
樹齢30余年のしだれ桑(福島県蚕業試験場内)
桑たちはどこへ行くのだろう・・・。
 福島県蚕業試験場梁川支場は、まもなくその使命を終らせようとしています。敷地内、圃場内にある無数の桑たちはどこへ行ってしまうのだろう・・・。
養蚕農家が無くなって20年余り。時代の流れとは言え、間違いなく田舎の”まち”の個人商店も姿を消して行くでしょう。 今後、十数年ほどで、地元個人資本の物販店は消滅することでしょう。
 しかし、数年を経ずして、その存在価値(コミュニケーション機能を含め)は見直され、形を変えて現れてくることも間違いないでしょう。
蚕都「梁川」のシンボルツリー(初夏)
蚕都「梁川」のシンボルツリー(初夏)
蚕都「梁川」のシンボルツリー(冬)
蚕都「梁川」のシンボルツリー(冬)
 八百屋さんは数年前から無くなったと言うのに、生産者の直売所は各部落ごとにあり、すこぶる元気。
 2006年元旦、伊達郡5町(梁川、保原、伊達、霊山、月館)が合併し伊達市となり、他の4町(桑折、国見、川俣、飯野町)は合併せず独自の道を歩む。
 そんなことは知らず関せず、蚕都「梁川」を象徴する『しだれ桑』たちは、元気に緑の景観を作っています。 養蚕農家は無くなりましたが、桑・蚕・絹と地域の人々との関わりは、形を変えこれからも続いて行くことでしょう。

 まもなく冬。しだれ桑たちは葉を落とし、その堂々たる枝振りを見せてくれる季節を迎えます。

今回の特集は、福島県梁川町の地域スタッフマルベリーさんです。
マルベリーさんのプロフィール
東北は福島県の最北端の梁川町。福島県といえば、「会津」とか「飯坂温泉」とかが有名で、県都はどこ?ときかれてもわかる人はまずいない。正解は福島市ですが、梁川町はその北に位置する。仙台伊達氏の発祥の地であり、仙台市内を流れる広瀬川と同名の川が町内を流れ、阿武隈川と合流する。水と緑だけが豊かなこの町の「歴史」と「今」をお伝えできればと思っています。
しだれ桑とまちづくり          ・福島県農業試験場梁川支場





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