シリーズ田舎探訪 京都府京都市伏見区
 
匠の伝承「伏見人形」
 
伏見人形の由来
  
 京都市伏見区は、日本酒とともに稲荷大社でも全国に知られています。稲荷大社は全国に約3万社あるといわれ、その中の「伏見稲荷大社」は総本宮です。 その伏見稲荷大社の信仰とともに発展したのが伏見人形です。
 伏見人形は五穀豊穣・商売繁盛の神として、幅広い信仰を持つ伏見稲荷大社の稲荷山の土で作られた人形で、日本最古の土人形といわれています。 各地の土人形に、「この流れを汲まないものは無い」といわれる程、強い影響を与えている土人形の源流です。

 その起源は、約380余年前(元和元年)に林玄藩の家臣、鵤(いかるが)幸右衛門が、この付近(深草の里)において小児玩具の土偶人(土人形)を作ったのが始めだとも、 奈良朝以前から深草(伏見)に土着した土師部(はじべ)の埴輪・土器作りから発生したものとも伝えられています。 しかし、その起源には諸説があり定かではありません。


 この伏見人形は、同じ京都の御所人形に比べ大衆的で、製作地が街道筋にあたっていた為、旅人たちが土産としたことで日本各地に広まり、 江戸時代の文化年間(1804-18)には、全国的にその名が定着したと伝えられています。
 明治の頃は60軒ほどあった窯元も、明治20年代を境に衰退の一途をたどり、現在製作を続けているのは「丹嘉(たんか)」と 「菱屋(ひしや)」だけとなっています。
丹嘉(たんか)
丹嘉の屋根の人形
彩りも鮮やかな伏見人形
 
  
 伏見人形作りは全て手作業で行われます。
『原型(雄型)作り⇒型(雌型)作り⇒土の調整⇒型抜⇒乾燥⇒焼成⇒窯出し⇒彩色仕上げ』の工程を、大きく2工程に分けて1年のサイクルで作られます。
5月〜9月にかけて、土を型に入れ人形の生地を作り、ある数量に達すると窯に入れる、という作業を繰り返します。秋から翌年の4月までは、焼き上げた人形に彩色します。
 そんな伏見人形の原型は、およそ3000点もあったとされ、伏見稲荷の聖土を用い、当時の風俗や伝説などを教訓や説話的な信仰や、縁起に結びつけたユーモラスに表現したものが多く、昔ながらの素朴で民族的な味わいを残しています。
その種類を大別すると、

  1.宗教上の信仰から生まれたもの
  2.節句の飾りに使用するもの
  3.教訓的なもの
  4.記念の意味と観賞用のもの
  5.児童の遊戯玩具になるもの
  6.土産用のもの


以上のように分類されます。
中でも布袋、狐、でんぼ、粒々、西行、柚、撫牛などは、古い文献にも記されている主だった品目といわれています。
  

★伏見人形は、郷土の誇り、そんな匠の伝承を繋ぐ!
 昨今の人形は、玩具又は鑑賞用として工芸化されていますが、本来、実生活との深い関係を有し、呪術的な用途を持ったものです。 伏見人形も、ほとんどが人形師達の豊かで鋭い感覚を、ふんだんにもり込んだ、おもしろくてユーモアなものが多く、いわゆる写実的人形でなく、 素朴なのが特徴といえるのではないでしょうか?しかも、その時々のニュースや世相、伝説、民話などを、見事に表現しています。 つまり「生きた人形」とでもいえるのです。その意味で伏見人形の作品価値は、すこぶる高いものがあると考えられます。
そのとぼけた素朴な味は、現代人のセンスにはなかなか受け入れられていないのが現状で、この伝統古き伏見人形を、いかに継続して後世に伝えて行くべきか?これが伏見人形の今後に課せられた、重要な問題と考えています。
 今回、伏見人形について、伏見人形館「稲山庵(とうざんあん)」の庵主の高島喜兵衛氏にお話を聞く機会を得ました。
 庵主は、まさに 50 の手習いよろしく、 50 歳過ぎてから独学で伏見人形づくりに挑戦されました。その思いは、「伏見人伏見人形館「稲山庵(とうざんあん)」形の良さを、より多くの人々に知っていただく」、「伝統の火を消さないために」に尽きるのではないでしょうか?
 庵主が、狐の土偶だけでも、「 3 時間でも 4 時間でも語ることができる」と言っておられたのが、その思いの強さを感じさせてくれました。
そんな伏見人形の由来、歴史を、今回の企画をきっかけに改めて顧み、郷土の誇りを一人でも多くの人に知っていただけることの手助けになれば幸いです。
 伏見稲荷界隈に立ち寄る機会がございましたら、伏見人形の生い立ちなどを思い出しながら眺めていただければ、また違った京都伏見を感じていただけるのではないでしょうか。
伏見人形は、約 80 ヶ所にも及ぶわが国土人形の元祖なのです。「郷土の誇り、そんな匠の伝承を、私たちの世代で絶やしてはならない」これが私の今回の結論になりました。



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