シリーズ田舎探訪 岐阜県関市
高賀山大本神宮 岐阜県関市
  岐阜県関市、旧洞戸村の山中に建つその社は、洲原神社と同時代の今から1,300年前の奈良時代に創建されたと伝えられています。平安時代には神社の背後の高賀山に妖魔が出現し、都から遣わされた藤原高光によって退治されたという伝説が残っています。
 

猿虎蛇退治

昔々、高賀山に得体のしれない魔物が棲みつき、田畑を荒らしたり、夏に雪を降らしたり、村人に危害をくわえておりました。
さらには、都へ行って御殿の稚子をさらって、日干しにしたりしました。
そこで、天皇の命により、藤原高光公が魔物退治に派遣されましたが、都の武士は、慣れない高賀の山に苦戦を強いられました。
そこで、高光公は、高賀山の麓にお宮を建て、神仏のご加護をお願いしました。
するとある夜、「ふくべの中の動かぬものをうて」と、高光公に夢のお告げがありました。
高光公は早速、高賀山と山続きのふくべが岳へ部下を引き連れ登りました。頂上には池があって、そのほとりの大きな木にはヒョウタンの蔓が巻き、ヒョウタンが鈴なりになっていた。その中に、ひときわ大きなヒョウタンを見た高光公は「夢のお告げはこれに相違ない」と矢を放ちました。
ギャオーという悲鳴とともに射られた魔物は、頭が猿、胴は虎、しっぽが蛇の姿をしておりました。

というのが、高賀の地元に伝わる「さるとらへび」のお話です。

大鳥居から高賀山方面を望む
大鳥居から高賀山方面を望む
高賀権現諸社絵図(江戸時代)
高賀権現諸社絵図(江戸時代)
先程のお話は地元に口伝えで語られてきたものですが、文字に記されたものではどのような話になっているのでしょうか。高賀神社には、『高賀宮記録』というものが伝わっているのですが、一番大きな違いは、『高賀宮記録』には「さるとらへび」という表記が出てこないところでしょうか。
お話自体は似ているので、どこかでつながりはあるのだと思いますが、『高賀宮記録』に登場する魔物は、「怪しい光」であったり、「牛に似た妖魔」であったり、「キジのような鳴き声のする大鳥」であったりします。
都合3回魔物が登場し、それぞれ養老元年には藤原家の家臣が、承平3年には藤原高光が、天慶年間には再び藤原高光が都から派遣され、退治しています。
そして、この最後の退治のとき、高賀山を囲む六箇所に神社を建立したと書かれています。

※高賀の麓の谷戸にある橋(谷戸橋)は、「牛戻し橋」と言われているそうで、『高賀宮記録』の出てくる牛に似た妖魔退治と関連して、高賀の神様が牛を嫌ったためという伝承もあるそうです。
高賀神社収蔵庫内
谷戸橋(牛戻し橋)
高賀神社収蔵庫内
高賀神社宝物殿

しかし、この『高賀宮記録』も、記録では文治2(1186)年に始めに書かれ、その後、応安3(1370)年、永正14(1439)年、文化9(1812)年と書き足されていったものと伝わりますが、実際には最後の文化9年にすべてが書かれたのではないかといわれているそうです。
藤原高光による妖魔退治の真偽の程はわかりませんが、こうした伝承が残っていること自体が神社の歴史を感じさせます。

神社に残されている神像や仏像から、辿れる歴史としては、神社の初期の頃(平安時代)には観音信仰と山の神の信仰が強く、その後中世になって、虚空蔵菩薩信仰が強くなり、こちらが中心となって、平行した形で、八幡信仰、大行事、牛頭信仰が続いてきたと推測されるそうです。

宝物殿に残る大日如来をはじめとする、数々の立派な仏像・神像群が往時の隆盛を物語っています。

猿虎蛇退治
現在の高賀神社のご祭神は、

国常立尊(クニコトタチノミコト)、天御中主尊(アメノミナカヌシノミコト)、国狭槌尊 (クニサズチノミコト)、豊斟淳尊(トヨクムヌノミコト)、泥土煮尊(ウイジニノミコト)、沙土煮尊(スヒジニノミコト)、大戸道尊(オオトジノミコト)、大戸辺尊(オオトマエノミコト)、面足尊(オモダルノミコト)、吾屋惺根尊(アヤカシコネノミコト)、伊弉諾尊(イザナギノミコト)、伊弉冉尊(イザナミノミコト)、大日婁貴(オオヒルメノムチ)、天忍穂耳尊(アメノオシホミミノミコト)、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)、彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)、鵜鵐草葦不合尊(ウガヤフキアエズノミコト)、素盞鳴尊(スサノオノミコト)、太玉命(フトタマノミコト)、天児屋命(アメノコヤネノミコト)、猿田彦命(サルタヒコノミコト)、金山彦尊(カナヤマヒコノミコト)、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)

と、まさに八百万の神々が祀られております。

高賀神社拝殿
高賀神社拝殿

高賀神社本殿
高賀神社本殿

高賀神社の建物は指定文化財にはなっていませんが、今から約280年前の江戸時代に建てられたものだそうです(本殿)。大きい2棟が高賀神社本殿と若宮八幡神社で、それに月日神社、大行事神社、津島神社が祀られています。

高賀神社の祭礼
現在秋の大祭が11月3日に行われているそうです。
祭礼は、神事に始まり、高賀山太鼓やお餅まきが行われるそうです。
かつては、「神輿」や「神楽」なども行われていたそうですが、現在では高賀地区の戸数も減り子どもも少なくなってしまったので、神輿を担ぐことも少なくなり、神楽も出来なくなってしまったそうです。

また、4月29日には、春の大祭(峰稚児神社祭)が行われているそうです。
これは高賀山頂に祀られている峰稚児神社のお祭りだそうです。
ここでも、前回の洲原神社同様、地区の戸数の減少などで、祭りが昔のように出来なくなっている現状がありました。
何とか伝統を伝えていってほしいとは思いますが、難しい問題だと思いました。


お洲原まいり
蓮華峯寺
蓮華峯寺とは、かつて高賀神社の境内にあった寺院で、大日堂とも呼ばれていました(現在、収蔵庫にある大日如来を本尊としていたと考えられています)。
明治の神仏分離令、廃仏毀釈の影響を受け、大日堂が壊されため、高賀神社にあった仏像は、ほとんどが少し下流にあったお堂に、僧侶たちによって移されました。
現在では、このお堂が蓮華峯寺となっています。
無住の寺であるため現在は、円空仏は円空記念館に、その他の仏像や神像は、神社の宝物殿に移されて保管されています。

また、蓮華峯寺の前を流れる高賀川の渓谷は「窯の口」といわれ、見事な景勝地となっています。
蓮華峯寺
蓮華峯寺
高賀渓谷
高賀渓谷

文化財・天然記念物
円空記念館外観
円空記念館外観

また、境内には、関市洞戸円空記念館が併設されています。円空は晩年、高賀の地で数々の仏像を彫り、また神社に伝わっていた「大般若経」を修復したりしました。そして、円空64歳のとき、自らの死を予見し、歓喜天を彫りそこに「釜且入定也」と刻んだそうです。
この意味は64歳にして入定すると言う意味で、自ら最後を悟った円空は弥勒寺に移り、これ以降の作品は作られていないと云われているそうです。

円空資料館では、この歓喜天を始め、円空には珍しい大きな作品や、おそらく高賀神社の本尊として祀られたであろう虚空蔵菩薩などが展示されています。

円空記念館
円空記念館
高賀神水
高賀神社から高賀川を下ったところ、板取川との合流点のあたりに、高賀神社の遙拝所があり、平成8年に、お手水用として、井戸を掘ったところ、毎時3tもの水が出てきました。それが、今では高賀神水と呼ばれ、全国的にも有名になったお水です。
この水は、ある大学教授の調査によると、1億年以上前の地層に封じ込められていた水ということです。
もともと、高賀信仰には雨乞いの信仰もあり、この水が出たのも高賀の神様のご神徳によるものかもしれません。

なお、ペットボトルとして販売されているのは「高賀の森水」で、奥長良川名水株式会社が製造・販売をしているものです。岐阜県出身のマラソンランナー高橋尚子さんがシドニー五輪のときに給水用として使用していたことが知られ、有名になりました。


高賀神水

高賀神社神水庵
高賀神社神水庵


編集後記
前回、洲原神社を訪れて、そこから車で約30分ほどのところに、同じような大きな神社が存在していたことは、驚きでした。
しかも、どちらかというと高賀は、大きな川のほとりでもなく、交通の要衝というイメージからも遠い山の中で、そんな場所にこれだけの信仰が息づいていたことがさらなる驚きでした。
調べている中で、これまで前回もあった白山信仰とのつながりがこの地にも見え、美濃地方における白山信仰の影響の大きさもまた、感じました。
宮司様のお話では、ここ2、30年の間に高賀神社境内の整備が行われたり、高賀神水庵ができたりと、大きな変化があったそうです。
そうした変化がこれからもあるかもしれませんが、伝わるものを大事にして、後世に伝えていってもらいたいと思いました。

○高賀神社へのお問合せ 
・高賀神社社務所 (8:00〜16:30) 休所:毎週月曜日
 岐阜県関市洞戸高賀
 電話 0581−58−2295 
・高賀神水庵
 電話 0581−58−8100

○協力・参考文献
・高賀神社 宮司様
・『洞戸村史 上・下巻』 洞戸村史編集委員会
・『ほら戸村の円空』 洞戸村教育委員会
・『岐阜 高賀山の信仰と造形』 成城大学仏像調査団

○高賀神社関係リンク○
高賀神社  ☆関市   ☆関市観光協会

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今回の特集は、ウィンズ事業部のスタッフとらさんです。
とらさんのプロフィール
子供の頃から旅が好きで、色んなところを旅しています。だけど、飛行機は苦手なので、ほとんどが国内です・・・。そんなとらさんの日常や旅先の写真、グルメ写真などをつづった写真ブログ展開中です。
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